【日旅連総会特集】個人旅行営業 今年度の重要施策 日本旅行 大槻 厚取締役


日本旅行 取締役 個人旅行営業統括本部長 大槻 厚氏

総合力を生かし、しっかりと送客

 ――昨年の個人旅行営業を振り返ると。

 大槻 昨年春まで過去数年間携わってきた「赤い風船」の造成のかじ取りを2年ぶりに担うことになった。大きく収益性を落とした価格重視の「レッドオーシャン市場」における商品をどこまで企画重視、当社ならではの商品に修正し収益を改善するかが大きなミッションだった。

 また改元に伴うゴールデンウイーク(GW)10連休という、需要創出の最大のチャンスに対応することを意識した。

 一昨年の北海道胆振東部地震と西日本豪雨、昨年の台風15号と19号など、大きな災害に立て続けに見舞われたが、国の施策もあり、被害をリカバリーする取り組みをその都度行い、環境変化に即座に対応する力もある程度ついてきた。

 結果としては、世の中の動きにいち早く対応した仕入れ、商品造成、販売の取り組みが功を奏し、赤い風船は過去最高の販売額となる見込みだ。また販売拡大に加え、収益性も改善された。苦戦を強いられてきた国内個人旅行だが、製販のさまざまな取り組みで明るい結果を残せたといえる。

 ――今年の市場見通しは。

 大槻 世間的にはGW10連休の反動や夏の大型イベント開催の影響があるといわれている中、需要は堅調だったが、年初からの新型肺炎の影響がどこまでになるか懸念される。しかし、終息に向けての準備はしっかり行っておく。

 GWは昨年ほどではないものの、日並びは通常よりは良い。このほか4連休が2回あるなど、国内旅行拡大の要素は十分ある。

 さらに東西テーマパークの新施設の開業や、新たな寝台列車の運転、新観光船の就航など新たな取り組み満載の「せとうち広島デスティネーションキャンペーン」といった観光関連のイベントが目白押しで、昨年以上に販売拡大のチャンスがあると考えている。

 今年度は航空会社による可変型IIT運賃制度の導入や、JRによるマル契のウェブ対応など、旅行商品の交通部分の仕組みが大きく変わる。当社は中期経営計画「TRANSFORM(トランスフォーム)2025」で変化への対応を年初に発表したところだ。

 中計はウェブを重視しながらも、リアルの商品や店舗も環境変化に合わせた上で、その特長をさらに磨くことで地に足を着けたビジネスを展開することを柱の一つとしている。お客さまの要望に応える商品の提供や旅ナカの情報提供、しっかりとした対応ができるよう、サービスを充実させたい。

 ――今年の増売策は。

 大槻 ウェブでは引き続きOTAの攻勢に負けないシンプルで、かつ競争力のあるウェブ専用商品の販売。告知を大幅に増やすとともに、販売サイドではユーザビリティーの向上など、ウェブにおけるテクノロジーを最大限活用して大幅な取り扱い拡大を目指したい。

 航空会社の新IIT運賃制度の導入で、商品のダイナミックプライシング化が今後避けられない。ウェブ販売の重要性は今後さらに増していくだろう。

 リアルでは、人による温かな応対や全国に店舗網があるという総合旅行会社としての信頼性のアピールに加え、これまでの単純なJRセットプランや廉価型商品の量販から、旅ナカ要素の大きな「おとなびジパング商品」や「新たなテーマ型旅行商品」の販売拡大へと転換を図る。

 スマートフォンやSNSといったデジタルな要素も絡めて、シニア層のみならず、今後最大のマーケットとなるデジタルネイティブ世代もターゲットにサービスを拡充し、「ウェブと共創するリアル店舗」を目指したい。

 社内的には、新たにグループ会社化した西日本新聞旅行のメディア事業の活用や、当社とグループ2社それぞれで事業展開していた店頭部門を4月に発足するリテール新会社に統合するなど、年度末に向けて事業の最適化を図る。

 ――日旅連会員に向けて。

 大槻 仕入れ、造成、販売と、あらゆる場面で日頃からご指導、ご協力をいただいている。改めて感謝申し上げたい。

 造成面では各地の仕入・誘客推進センター、赤い風船事業部との連携による着地ニーズの把握や素材の開発。販売面ではウェブや店舗でのPR活動など、あらゆる連携を心強く思う。

 お客さまに当社ならではの商品を提供することがわれわれの使命で、パートナーである日旅連の皆さまとの共創が最も重要と考えている。

 われわれの総合力を生かし、これからもしっかりと送客することを改めてお約束したい。

 年初から広がっている新型肺炎で影響を受けている施設の皆さまにはお見舞いを申し上げるとともに、今後しっかりとリカバリーをしたい。

(聞き手=森田淳)

日本旅行 取締役 個人旅行営業統括本部長 大槻 厚氏

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